近年、心血管系のリスクホルモンとしてのアルドステロンの存在が注目されつつあるが、その心血管障害機構には不明な点も多い。今回、ヒト大動脈由来血管内皮細胞を用いて、レニン・アンジオテンシン(RA)系遺伝子発現に及ぼすアルドステロンの影響を検討した。まず、レニン、アンジオテンシノーゲン(ATG)、アンジオテンシンI変換酵素(ACE)、キマーゼ、アンジオテンシンIIタイプ1(AT1)ならびにタイプ2(AT2)受容体のそれぞれの遺伝子発現を既報のRT-PCR法にて検討した。アルドステロンによる発現制御の確認にはノザン法またはRT-サザン法を用いた。その結果、レニン、ACEはRT-PCR法にて、ATG、AT1はRT-サザン法にてその遺伝子発現が確認されたが、キマーゼ、AT2の発現は確認されなかった。アルドステロンによる発現調節はATGにおいてのみ観察され、半定量的RTサザン法にて最大約10倍(アルドステロン10-6M)のmRNAの増加が確認された。最近、アルドステロンの心血管障害機構としてRA系の活性化の存在が指摘されている。ラット心筋細胞ではACE遺伝子発現が、ラット血管平滑筋細胞ではAT1の蛋白発現がアルドステロンにより上昇することが知られている。今回の結果はATG遺伝子発現制御を介したRA系の活性化機構の存在を初めて示唆するものである。
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