テストステロン処理によってラット雌新生児の脳が雄型に転換する際に内側視索前野において特異的に発現する遺伝子をサブストラクションクローニング(差引法)によって組織的に探索しテストステロンによる脳の雄性化に関与する遺伝子の同定を行うことを目的として研究してきた。 現在までに、テストステロン処理後及び無処理のラット雌新生児各約150尾づつから内側視索前野を単離し、これに含まれるmRNAを精製し、それぞれに対応するcDNAライブラリーを合成した。この2種類のcDNAライブラリーを用いてビオチン化プライマー、ストレプトアビヂンならびにPCR法を用いた差引法を行うことによって、テストステロン処理時のみに発現しているcDNAの濃縮を行なった。人為的に加えたポジティブコントロールを用いた検定の結果、この差引法を3回繰り返すことによってテストステロン処理時のみに発現しているcDNAが現在までに約100倍濃縮されていることが推定できた。さらにRDA法による差引法を加えることによって、マーカー遺伝子を約10^5倍の濃縮することにに成功した。現在、上記差引法のcDNA産物をクローン化し、サザンハイブリダイゼーションによるディファレンシャルスクリーニングを行い有望クローンをスクリーニングしている。また、これと同様の差引法を逆向きに行うことによってテストステロン処理時に発現が失われるcDNAの探索も現在併行して行っている。
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