研究概要 |
アセチルCoAはミトコンドリア内においては酸化的リン酸化によるエネルギー産生に使われる一方、細胞質ではコレステロール・脂肪酸合成の前駆体として利用される生体にとっては必要不可欠な物質である。細胞質におけるアセチルCoAの産生経路はクエン酸を基質とし分解するATPクエン酸リアーゼによる触媒経路が主たるものと考えられていたが、近年、酢酸をCoAとライゲーションする事でアセチルCoAを合成するアセチルCoA合成酵素(AceCS1)のcDNAクローニングがなされ(Fujino et al J Biol. Chem. 2001, Luong et al J Biol. Chem. 2000)、アセチルCoA産生の新たな経路の存在が明らかとなった。アセチルCoAを合成するAceCS1のmRNAの発現は、繊維芽細胞から脂肪細胞の分化に伴い上昇する。また個体レベルでは絶食でその発現は低下し、再食で絶食前のレベル以上に上昇する。このようにAceCS1は栄養代謝・脂肪細胞において重要な役割を担っていると考えられるが、その代謝経路における位置付けや生理的意義、またその転写調節機構は明らかではない。そこで今回我々はAceCS1のプロモーターをクローニングし転写調節機構の解析を行った結果、転写因子sterol regulatory elemennt binding protein(SREBP)がその転写調節の中心を担っていることを明らかにした。プロモーター領域には8個のSREがクラスターを形成して存在し、その下流に隣接するGC-boxとがシナジスティックに転写を調節していることが明らかとなった。さらにGC-BoxにはSp1とSp3が結合しうることがゲルシフトアッセイで示され、かつSp3による転写活性はSp1に比べ低いことからSREBPを介した転写活性はSp1/Sp3の比率で調節されているものと考えられた。
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