研究概要 |
1.膵島α細胞で発現しているグルカゴン遺伝子プロモーターE-box配列に結合する転写因子のスクリーニング グルカゴン遺伝子のプロモーター領域に位置するE-boxに結合する転写因子を単離するために、膵島α細胞株α-TC1.6から作製したcDNAライブラリーを、BETA2をbaitとして酵母two-hybrid法を用いてスクリーニングを行った。その結果、BETA2に結合すると考えられるクローンが4つ得られた。この内の1クローンの塩基配列に基づいたホモロジー検索の結果、相同性の高いマウスESTクローンを2つ得た。これらのクローンを用いて塩基配列決定を行ったところ、825bpのORFを含む1,676bpのcDNA配列が認められ、275個のアミノ酸からなる蛋白をコードする新規蛋白であることが明らかとなった。さらに、データーベース検索で高い相同性が得られたヒト神経細胞由来ESTクローンより、ヒトホモローグの塩基配列決定を行った。ヒトとマウス間では、アミノ酸レベルでは93.8%、核酸レベルでは88.8%の相同性が認められた。そこで、この新規遺伝子をAlpha1と命名した。Alpha1の染色体上の位置をFISHにより検討したところ、マウスでは第7染色体のF2-F3に、ヒトでは第16番染色体短腕11.2領域にそれぞれ位置することが明らかとなった。 2.発現組織の検討 RT-PCRによる発現組織の検討により、マウス臓器では脳および膵臓で高発現が認められた。Alpha1の発現部位は、BETA2の発現部位と類似していることから、Alpha1およびBETA2は生体内で相互作用している可能性が高いと考えられる。現在、Alpha1のグルカゴン遺伝子の転写調節能について検討中である。さらに今後、脳での高発現意義の解明も含め、本遺伝子のノックアウトマウス等を作成し、発生・分化におよぼす影響について検討が必要であると思われる。
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