研究概要 |
【1】ヒトABCA1プロモーターのクローニングとその調節機構 ヒトABCA1蛋白の発現調節を解析するために、ヒトABCA1遺伝子の転写制御領域(プロモーター領域)をクローニングした。具体的には、5'-RACE(5'-rapid amplification of cDNA end)を用いてABC1 cDNAの5'末端の塩基配列を同定し、その情報を基にhuman genome projectのデータベースからABC1遺伝子の予想プロモーター領域を同定し、PCRによってクローニングした。その結果、(1)ヒトABCA1 cDNAは報告よりも5'末端が455bp長く、その中にKozak'sのルールにより適合したin-frame ATGが見つかった。そのため、蛋白としても60アミノ酸N端が長く、2261残基からなると予想された。(2)転写開始点の5'直上には、弱いながらTATA boxのコンセンサスに類似した配列が見つかり、ABCA1はおそらくTATA-less遺伝子ではないと考えられた。(3)ATGより5'上流の領域には、複数のSP1、AP1の結合配列、SRE(sterol regulatory element)類似配列、NF-κBの認識配列、及びSTATの認識配列などが見いだされ、ABCA1遺伝子の発現は複数の機構によって制御されていると考えられた。(4)5'UTR(5'untranslated region)に2つ、転写開始点よりも5'上流に1つのSNPs(single nucleotide polyporphism)を見いだした(Biochem.Biophys.Res.Commun. 271,451-455)。次に、この領域の変異体を作製してluciferase vectorに組み込んだ後、初代培養ヒト線維芽細胞に感染させ、プロモーター活性を評価した。更に、その活性に変化を与える物質によって、線維芽細胞のcholesterol effluxがどう変化するかを検討した(投稿準備中)。 【2】ヒトABCA1蛋白の機能 細胞生物学的手法を用いて、アポ蛋白A-1による細胞コレステロール引き抜き現象は、第一段階のリン脂質の引き抜きと、それに引き続くコレステロール引き抜きの、2つの段階から構成されることを示唆した(Biochemistry 39,14113-14120)。現在、cholesterol effluxの機構について、生化学的手法並びに放射標識したコレステロール誘導体を用いて更に詳細に検討している。
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