(1)ABCA1蛋白の活性制御機構: ABCA1蛋白を介するアポ蛋白A-1への細胞のcholesterol effluxは、カベオラと呼ばれるコレステロールに富んだ細胞膜構造を起点とし、この現象がPDGF (platelet-derived growth factor;血小板由来増殖因子)によって活性化することを、光及び放射標識コレステロールアナログのカベオリンへのクロスリンク法を用いて示した。 (2)マクロファージ泡沫細胞の形成機構: ABCA1の活躍の場であり、粥状動脈硬化初期病変を特徴づけるマクロファージ泡沫細胞の形成には、酸化LDL (low density lipoprotein;低比重リポ蛋白)受容体として知られるCD36が、非酵素的糖化反応の最終生成物であるAGE (advanced glycation endproducuts)を、リガンドとしてエンドサイトーシスする現象が関与することを見いだした。 (3)LXR (liver X receptor)の生理的リガンドの検索: ABCA1遺伝子の発現上昇を担う転写因子であるLXRの内因性リガンドの同定のためには、酸化ステロールの高感度定量法を開発する必要がある。この目的のために、コレステロール及び酸化ステロールの電極酸化還元反応を検討し、その電気化学検出法開発への応用を試みた。予備的検討では、従来の誘導体化やコレステロール酸化酵素を一切使うことなく、コレステロール分子自身の酸化による、新しい検出法の開発が可能であることが示唆されている。
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