1】マウス肝初代培養細胞を用いたアポAIによる特異的脂質搬出機構の検討 マウス初代培養細胞はDennis Vanceの研究室(カナダ・アルバータ大学)で用いられているコラーゲナーゼ法で採取した。コレステロール低下薬であるプロブコール含有チャウで一週間飼育したマウス並びにコントロールマウスの肝初代培養細胞を16時間培養し、分泌されてくるリポ蛋白質をゲル濾過HPLCで分析した。その結果培養上清中には大型HDLの位置にコレステロールのピークが観察され、プロブコール投与マウスではこれが大きく低下していた。この培養時にヒトアポAIを共存させると、コントロールマウスの細胞培養上清中のHDLは上昇した。一方、プロブコール投与マウスの細胞では外因性のアポAIの効果は観察されなかった。 2】HepG2細胞を用いたアポAIによる特異的な細胞脂質の搬出機構の検討 HepG2細胞をコントロールLDLまたはプロブコール含有LDLと24時間培養後、培養上清に分泌されるリポ蛋白質を観察した。培養上清中のHDLはマウス初代培養細胞と同じくアポAI存在下で容量依存的に上昇し、プロブコール投与細胞ではその90%が消失していた。また外因性のアポAIの効果は観察されなかった。プロブコール投与によりHepG2細胞のHDLが著明に低下した理由を検討する為、培養上清中のアポAIの分泌と、細胞膜画分のABC-A1量をウェスタンブロッティング法にて観察した。HDL産生が大きく低下しているプロブコール導入細胞でも両蛋白質はコントロールと同様に観察された。またRT-PCR法によりアポAI、アポE、ABC-AIの発現を調べたが、これも差が見られなかった。これらの結果より、プロブコールはHDL新生に関わる因子(群)を不活性化させることが推測された。
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