研究概要 |
以前より,ブタを用いた生体部分小腸移植モデル・短腸モデルによる検討において経口FK506薬物動態の検討を行い「FK506(タクロリムス)は吸収過程で小腸にかなりの代謝を受ける」ことを見出してきた。 今回,小腸粘膜上においてFK506を代謝していると考えられる酵素cytochrome P450 3A4(CYP3A4)の競合阻害薬であるケトコナゾールを経口で低用量併用投与し,FK506の血中濃度を増加させる試みを行った.体重16〜20kgの幼若ブタ2頭に全身麻酔下に採血用カテーテルを挿入し,「小腸全切除手術」の有無,および「ケトコナゾール(5mg/kg/day)併用投与」の有無によって4群,各3頭ずつに分類した.FK506(0.6mg/kg/day)を第3〜7病日に1日1回経口投与し,第7病日に時間を追って9回採血し,FK506血中濃度-時間曲線から,Area Under the Curve(AUC)を算出した. 結果,小腸の切除の有無に関わらず,ケトコナゾールの低用量併用投与で経口FK506の血中濃度は上昇し,特に小腸を切除していない群ではAUCが3倍にも上昇した.従って,小腸に強く発現していると言われる消化管CYP3A4を少量のケトコナゾールが強く阻害し,血中濃度の増加が得られることが確認された. この実験から,機能を有する小腸があり,経口FK506の血中濃度が十分維持できない症例においては,抵用量ケトコナゾールを併用または配合すれば十分な血中濃度増加効果を期待できることが強く示唆された. この成果を第7回国際小腸移植シンポジウム(Stockholm, 2001年9月12-15日)で発表し,論文化し(Transplantation Proceddings, in print),本研究を終了した.
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