1.平成11および12年度に引き続き、食道癌に対する放射線化学療法の効果判定にフラクタル次元を用いる研究を全ての食道癌症例に対して施行し、さらに症例を蓄積した。これにより、食道癌の治療効果は従来から用いられている縮小率よりも鋭敏に治療効果を反映していることが判明した。特に組織学的な奏効度と相関があり、フラクタル次元により、顕微鏡レベルでの治療効果をいち早く評価できる可能性が考えられた。現在、市販の画像解析ソフトの特殊機能としてフラクタル次元解析が可能となっており、更に開発を進めることで臨床現場でのフラクタル次元解析の利用が拡大できるはずである。 2.フラクタル次元解析を研究する過程で、癌部と非癌部の境界をいかに判別するかが問題となった。この問題を解決すべく、CEA、CA19-9等の各種腫瘍マーカーによる胃癌組織に対する免疫染色を行い、切除標本上での腫瘍境界の検出を試みた。残念ながら、現在確実に境界を染め分けるまでには至っておらず、今後さらなる技術および材料の改良が必要となった。また、これによって得られた境界線のフラクタル次元と術前の食道透視から得られた腫瘍境界のフラクタル次元の間に有意の相関は見られなかった。 3.マンモグラフィーに示される乳腺腫瘍に対してフラクタル次元を計算する事により、良悪性の判別のための有用な情報が得られることが明らかとなった。現在、フラクタル次元を用いての乳癌画像診断では、従来の読影による乳癌正診率を超えるに至っておらず、計算方法の改善、利用法の再検討が今後の課題である。
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