研究概要 |
【研究背景】この地球上には3百万種以上の動植物が存在し、その125分の1は有益な薬効成分を有すると考えられる。我々は、臨床で汎用される種々の生薬をスクリーニングし、ヒト食道癌の増殖抑制を引き起こす生薬黄連を同定するに至った(和漢医薬学雑誌,15:340-341,1998)。さらに、黄連はその抗炎症作用を介し、ヒト食道癌移植マウスの癌悪液質を改善するという示唆的なデータを得た(Cancer Letters,2000)。このように黄連による栄養状態の改善効果は単なる栄養補給剤(supplement)としての生薬の使用ではなく、科学的根拠に基づいた生薬の臨床応用という点で大いに意義があると考えられる。また、抗癌剤使用時におけるQOLの改善および治療効果の増強も期待される。以上より、まず大腸癌細胞(colon26/clone20)の同系マウス移植モデルを用いて、黄連の悪液質改善作用を基礎的に検証した。 【実験結果】colon26/clone20移植8日目より担癌マウスの体重は減少したが、黄連投与群では明らかに体重の減少が抑制された(P<0.02)。黄連投与群はコントロール群に比し、各栄養学的パラメータは有意に良好であった。腫瘍部のIL-6mRNAのコピー数は、黄連投与群において有意に低下していた。また、血清および腫瘍部IL-6タンパクも黄連投与群で明らかに低値であった。両群間の摂食量に差はなかった。黄連服用による抗腫瘍効果は認められなかった。黄連およびberberineはIn vitroにおいて、colon26/clone20のIL-1投与後のIL-6mRNA誘導を濃度依存性に抑制した。以上の結果をInternational Journal of Cancer (in press)に報告し、現在、抗癌剤との併用効果につき実験を継続中である。
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