研究概要 |
当科で根治手術可能なS状結腸癌および直腸癌患者のうちリンパ節転移の無い症例(DukesAまたはDukesB)に本研究について説明し、同意の得られた症例を順次無作為にプロバイオティクス投与群と非投与群に分け、術後経口摂取開始時よりそれぞれプロバイオティクス、プラセボ投与を開始した。使用したプロバイオティクスはビオスリー^【○!R】(Streptococcus faecalis, Clostridium butyricum, Bacillus mesentericusの凍結乾燥粉末混合物)で通常処方量(3.0g分3)で連日投与した。プロバイオティクス投与群は17症例、非投与群は18例であった。 手術前、術後1ヶ月後の両群の腸内細菌叢の比較であるが主要11菌群の嫌気培養の結果では2群間に腸内細菌叢の変化について差を認めることができなかった。DNAクローンライブラリー法を用いた解析では、プロバイオティクス群は嫌気性菌の増加が認められ、とくに乳酸菌の増加が認められたが、非投与群と比較し統計学的な有意差には達しなかった。 手術1年後の大腸内視鏡検査時に正常直腸粘膜より採取した生検組織よりmRNAを採取しcDNAマイクロアレイを施行した(プロバイオティクス投与群は10症例、非投与群は9例)。2群間で大腸癌関連遺伝子(Ras,Apc,hMLH1,hMLH2,ERα,ERβ,TGFα,TGFβ)の発現量を比較したが、大腸癌関連遺伝子の発現量に関して2群間で差は認められなかった。
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