研究概要 |
survivinは、D.C.Altieri博士らによりeffector cell proteasereceptor-1(EPR-1)のアンチセンスとして発見された新しいアポトーシス抑制遺伝子である。その最大の特徴は発現形式にあり、胎児期においてはすべての組織においてその発現を認められるが、いったん正常に発育・分化した細胞においてはその発現は消失し、癌化と共に再発現を呈するということである。現在までに共同研究として胃癌(Cancer Res.,58:1808-1812,1998)、大腸癌(Cancer Res.,58:5071-5074,1998)、乳癌(Clin.Cancer Res.,6:127-1134,2000)における腫瘍特異的なsurvivin発現について報告してきた。よって、このsurvivinを標的にすれば、選択的な抗腫瘍効果が期待できると考えられた。 まず、survivinのアンチセンスとして機能するEPR1の一部を重金属で発現誘導可能なプロモーターの下流に配置したプラスミドを構築した。これをリポフェクタミン法によりヒト大腸癌細胞株に遺伝子導入し、survivin低発現株を樹立した。その結果、in vitroにおいて細胞増殖抑制効果・アポトーシス誘導能の亢進・制癌剤感受性の増強効果が認められた。また、in vivoにおいても著明な抗腫瘍効果が認められ、これは制癌剤の併用により顕著であった。よって、今後、現段階で最も効率よく遺伝子導入できるといわれているアデノウイルスベクターを作製し、in vitro, in vivoにおいての腫瘍特異的な抗腫瘍効果を検討し、遺伝子治療として臨床応用が可能かどうかを明らかにする予定である。
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