移植免疫領域における最大の目標は移植臓器特異的な免疫寛容の誘導であり、現在種々のアプローチでその方法が検討されている。従来より我々は抗原提示細胞とT細胞間の副刺激経路を移植臓器そのものの遺伝子修飾により阻害することを検討してきた。本研究においてはB7/CD28、B7-RP1/ICOS間の副刺激経路をそれぞれCTLA4-Ig遺伝子、ICOS-Ig遺伝子により阻害することを目的とした。 本年度の研究経過については以下の如くである。 1.遺伝子銃による諸臓器への遺伝子導入の確認 CTLA4-GFP遺伝子を作製し、マウス、ラットの皮膚、肝臓、心臓、腎臓、骨格筋に導入し、蛍光顕微鏡下にGFPの発現を検討した。その結果、表皮、肝臓では導入後1日目よりGFPの高発現を確認し得た。心臓、腎臓、骨格筋への導入においても表皮、肝臓に比して低いものの、GFPの発現は確認し得た。 2.皮膚移植片へのCTLA4-Ig遺伝子導入・同種移植 同種皮膚移植の系でCTLA4-Ig遺伝子導入の有効性について検討した。 表皮側からの遺伝子導入ではGFP導入実験では十分な発現が確認されていたが、CTLA4-Ig遺伝子導入同種移植片の生着延長は認められなかった。この原因としては皮膚特異的な抗原性の他、遺伝子銃による導入に伴う組織損傷や炎症反応の関与も推測された。 3.心移植片へのCTLA4-Ig遺伝子導入・同種移植 ラット同種心移植の系でCTLA4-Ig遺伝子導入の有効性について検討した。 心摘出に先駆けて遺伝子銃によるCTLA4-Ig遺伝子導入を行い、同種異所性心移植を行った。 acute rejectionの系ではCTLA4-Ig遺伝子導入群に対照群に比し、長期生着の得られた個体が認められたが、群間の生着延長効果は確認できなかった。この原因としてはGFP発現実験の結果と併せると、一回の遺伝子導入量が一定でない可能性が考えられた。 またchronic rejectionの系ではCTLA4-Ig遺伝子導入群で冠動脈内膜肥厚の抑制効果が確認された。 次年度以降は、遺伝子導入量を詳細に検討し、安定した遺伝子発現を確立するとともにICOS-Ig遺伝子との併用についても検討を行っていくものである。
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