(方法)静止モデル:雑種成犬を用いた。全身麻酔下に開胸し、心臓・大血管を一塊として摘出した。大動脈を切開し、左室流出路の水平断面に針糸を内腔より外側に刺出する。その糸を鉛の重りにて水平に牽引し、大動脈基部拡大モデルを作製し、大動脈を生理食塩水にて50mmHgの圧にて還流した。大動脈および心尖部より内視鏡を挿入し、ビデオテープに大動脈弁接合状態を記録した。鉛の重量または牽引する方向の条件を変化させ、それぞれの条件下における、左室流出路・大動脈弁輪・Sinotubular junction(STJ)、それぞれの径を測定した。心拍動モデル:静止モデルと同様の方法にて行ったが、心臓・大血管の摘出前に大動脈に心筋保護液(グルコース、インシュリン、カリウム液)を注入し、心停止を得た後、摘出した。摘出後、大動脈基部拡大モデルを作製し、そのモデルに対し臨床で行われている自己弁温存大動脈基部再建術式である、Reimplantation法(Ri群)またはRemodeling法(Rm群)を行った。その後、36℃に加温、酸素化したTyrode液を大動脈・左房に潅流し、心拍動モデルを作製した。上行大動脈に内視鏡を挿入し、心拍動状態における大動脈弁開閉動態をハイスピードビデオ(250frames/second)に記録した。また、同時に心電図・大動脈圧・左室圧・左房圧をそれぞれ記録した。 (結果)静止モデル:STJを拡大させることにより、大動脈弁の中心部での接合不全を認めた。その接合不全の程度は、STJの拡大程度に比例して増悪した。また、その接合不全は、特に交連部の拡大程度と強く関連していることが示唆された。心拍動モデル:Rm群の大動脈弁開閉動態は、ほぼ正常と考えられたのに対し、Ri群では、大動脈弁尖の彎曲が開口から閉鎖まで認められた。また、Ri群においては、大動脈弁の有効弁口面積の制限が確認された。
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