肺癌患者の腫瘍内浸潤B細胞由来IgG抗体の認識する腫瘍特異抗原をSEREX法を用いて同定し、得られた抗原の解析を行い以下の結果を得た。 自己肺癌細胞から作成したcDNA libraryをSCIDマウスを介した腫瘍内浸潤B細胞由来ヒト型IgG抗体をフローブとしたSEREX法にて、抗体の認識する抗原をコードする22の遺伝子を単離した。既知、未知の遺伝子が各々13、9であり、その塩基配列の解析から前者はmitosis、signal、cytoskeleton、oncogeneに関与するcDNAであった。また既知遺伝子の一つは158番目のアミノ酸の変異を有するp53であり、本実験系の妥当性を示しているとともに、腫瘍内浸潤B細胞が腫瘍特異的抗体を産生していることが証明された。さらに、22の遺伝子の中にtransmembrane domainをもつ遺伝子が4つ得られており、その中でclone 3-13は正常肺組織と比較し肺癌組織に発現が高く、腫瘍特異的な腫瘍抗原と考えられる。細胞表面に存在する抗原に関しては、将来的に抗原特異的な診断や抗体療法などの肺癌に対する新しい治療法の開発につながる可能性が考えられた。本実験系で得られた抗体に認識される腫瘍抗原が細胞性免疫に反応性があるか検討するために、変異を含む9merのp53由来ペプチドを患者HLA class Iのbinding motifを参考に合成し、同患者のリンパ節リンパ球を刺激培養し、ペプチド特異的CTL cloneを樹立した。このCTLクローンはHLA-Cw7拘束性に変異ペプチドを認識するのみならず自己腫瘍細胞株も殺傷した。このことは、本研究で同定された抗体に認識される腫瘍抗原は細胞性免疫のターゲットにもなりうることが示唆された。
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