雑種成犬を用いて、舌咽神経知覚枝の分布領域である舌後方1/3を電気刺激し、舌咽神経の神経活動電位の記録を試みた。 Pentobarbital麻酔下に、舌咽神経知覚枝の分布領域である有郭乳頭より後方の舌に2本のステンレス針電極を刺入し0.2msec幅の矩形波で双極電気刺激を加えた。両側後頭開頭とC1-laminectomyを行い、舌咽神経上に銀ボール電極を設置して複合神経活動電位を記録した。銀ボール電極を、三叉、顔面、迷走、副、舌下の各脳神経上において電位の記録を試みた。また小脳橋角部の硬膜上や開頭部近傍の筋肉上にもおいて電位の波及を検討した。 刺激側の舌咽神経上から、再現性のある多相性の電位が記録された。舌の刺激部位を5mm間隔で移動させたところ、正中から10mm外側で有郭乳頭後縁から15mm後方の部位の刺激で最も振幅の大きな電位が記録され、このときの波形の潜時は2.76±0.63(mean±SD : n=17)であった。刺激強度を漸増させていくと2mAから電位が記録され、10mAでほぼ一定となった。このとき三叉、顔面、迷走、副、舌下の各脳神経上からは再現性のある電位は記録されなかった。筋弛緩薬の投与前後で電位に変化はみられず、また呼吸・血圧・心拍数にも変化を認めなかった。記録部位遠位側の舌咽神経に1% Lidocaineを塗布すると舌咽神経上で記録された電位は消失し、時間経過に従い電位は回復した。舌咽神経の切断でこの電位は消失した。 以上の結果から、有郭乳頭より後方の舌を電気刺激することで小脳橋角部の舌咽神経上から記録された電位は、舌咽神経を経由した複合活動電位であると考えられた。舌を電気刺激することで、大脳皮質から舌咽神経誘発電位が記録される可能性が示唆された。
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