Penthobarbital麻酔下の雑種成犬を用いて、昨年度の研究から明らかとなった舌咽神経知覚枝の示適刺激部位(舌の正中線から10mm外側で有郭乳頭後縁から15mm後方)を0.2msec幅の矩形波で双極電気刺激した。両側後頭下開頭と両側前頭頭頂開頭を行い、大脳皮質上に複数個の銀ボール電極を設置して、舌後方を電気刺激した際に大脳皮質上から再現性のある電位が記録できるかどうか検討した。 刺激対側のcoronal gyrus上から頂点潜時が20.1±3.7と35.7±8.2msec(n=6)の再現性のある二相性電位が記録された。刺激同側のcoronal gyrus上からも振幅は小さいが二相性電位が記録された。この電位が記録された部位は、口唇の電気刺激により誘発された三叉神経誘発電位が記録された範囲よりも後方で狭い範囲に限局していた。またこの電位は、頸部で露出させた舌咽神経を直接電気刺激した際に大脳皮質上から記録された電位とほぼ同じ波形と潜時であった。 刺激側小脳橋角部で三叉、顔面、迷走、副、舌下の各脳神経を切断しても電位の波形に変化は認めなかったが、舌咽神経に1%Lidocaineを塗布すると電位は消失し、時間経過に従い電位の振幅が回復した。舌咽神経の切断でこの電位は消失した。 以上の結果から、舌後方を電気刺激することで主に刺激対側の大脳皮質上からされた電位は、舌咽神経誘発電位と考えられた。
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