てんかん発症のメカニズムとして、神経回路網の再生が推定されている。接着因子の一つであるN-cadherinは、神経突起の伸長に深く関わっており、てんかんの焦点形成の際に、このN-cadherinが深く関わっている可能性が高い。そこで、本研究では、てんかんモデルにおいてN-cadherinの発現パターンを蛋白およびmRNAレベルで検討するとともに、N-cadherinの制御によりてんかんの予防、治療が可能であるかを研究することを目的としている。平成13年度は、ラットのカイニン酸の腹腔内投与によるてんかんモデルを作成した。これによりラットでてんかんが誘発され、海馬のCA1領域を中心に神経細胞障害がおきることが確認された。また同部位では神経障害に伴いN-cadherinの蛋白およびmRNAが一時減少するが、その後神経細胞障害が持続しているにも関わらず、てんかん誘発48時間後より再びN-cadhern蛋白およびmRNAが回復してくることが免疫染色およびin situ hybridizationで確認された。この結果をまとめてNeuroscience Letterへ報告した。今後はカイニン酸の腹腔内投与以外のてんかんモデルでも同様な現象がおきるかどうかを検討するとともに、その原因についての検討、特に神経回路網の再構築や神経再生についての検討やてんかんの治療方法についての検討を行う予定である。
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