平成13年度は、本研究の主目的である、パーキンソン病の運動機能障害に何らかの役割を演じているといわれている運動関連大脳皮質(大脳皮質一次運動野・前運動野・補足連動野など)の相互関係解明にむけ、まず健常人に対する磁気刺激から開始した。健常人の大脳皮質一次運動野、前運動野、補足運動野に対し経頭蓋大脳磁気刺激を施行(刺激強度はmean threshold、単発刺激、約1Hz、)し、四肢末梢筋(上肢:第1背側骨間筋、下肢:前脛骨筋)から運動誘発電位(MEP)を記録した。その後、MEPの波形を電気生理学的に検討した。その結果、大脳皮質一次運動野刺激では、非常に高率にMEPを記録することが可能であった。このときのMEPの潜時にはばらつきが少なかったが、振幅は個人間・施行間でばらつきが大きく存在した。前運動野の刺激ではMEPの誘発率は低く、潜時・振幅ともその値にばらつきが大きかった。また、補足運動野の刺激に関しては、その解剖学的な部位から、上肢MEPを記録することは不可能であったため、下肢MEPを記録した。しかしこれもMEPの誘発率は低かった。これらの結果から、パーキンソン病患者への大脳磁気刺激の臨床応用は、まず大脳皮質一次運動野から開始し、大脳磁気刺激の効果判定として、パーキンソン病患者の運動機能障害を磁気刺激前後でUPDRSのmotor sectionを用いることとした。現在までに得た結果として、パーキンソン病患者の磁気刺激前の状況(服薬状況や固縮・無動の程度)により、磁気刺激によるMEPの波形には大きなばらつきが存在した。現在、これらの諸問題を解決すべく、刺激条件や記録環境の改善などの検討を重ねている。また磁気刺激が運動機能障害の改善に結びつくかというテーマに対しても、データ収集中である。得られたデータを解析、検討し、学会発表や論文発表に向けた作業も併せておこなっている。
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