下垂体腺腫に対しbiological markerを検討することにより、増殖能、浸潤能を組織切片上で評価し、その結果と、臨床所見および内分泌所見を比較検討することを試みた。これらの結果より、それぞれの症例に対する増殖能、浸潤能を評価することが出来れば、治療方針の確立に不可欠な知見が得られ、下垂体腺腫患者の長期機能予後改善が期待できるものと思われた。 平成13年度は腫瘍関連抗原RCAS1(receptor-biding cancer antigen expressed on SiSo cells)について検討した。RCAS1は腫瘍細胞に発現し、それを認識する受容体を介して免疫細胞の細胞増殖を抑制しapoptosisによる細胞死を誘導するとされている。RCAS1の発現とKi-67モノクローナル抗体(MIB-1)の発現を免疫組織学的手法にて検討したところ、RCAS1の発現は腫用増殖能を表すMIB-1陽性率と相関する傾向がみられ腫瘍の増殖に関与することが推察された。その結果は共同研究者であるUmeokaらによってMod Pathol 2001 ; 14(12) : 1232-1236に発表された。 平成14年度はこれまでの結果と臨床所見、内分泌所見、長期予後とを詳細に検討するとともに、症例数を増やし他のbiological markerに対しても検討する予定である。また、biological markerだけでなく、転写因子の発現も調べることにより、下垂体腺腫の増殖能、浸潤能を組織発生からも検討する予定である。
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