研究概要 |
【要旨】重量物挙上動作において,物が持ち上がる寸前に脊椎があたかも撓むような動態を呈することを3次元動作分析により明らかにした。体幹前屈位という体幹筋活動が通常静止している状態で観察されるこの現象が,急性腰痛発症因子である脊椎弾性破綻に密に関連していることが推察され、労働災害、スポーツ傷害等の予防的意義にて重要な知見であると考えている。また、腰椎ベルト装着によりこの他動的屈曲が減少する傾向があり、その腰痛発症予防効果が示唆された。 【方法-その1-】対象は腰痛を認めない健常人ボランティア8人とした。重量物挙上動作の初期に見られる脊椎の撓みを3次元動作解析装置(VICON system)によって定量的に解析した.脊椎の撓みは他動的屈曲(passive flexion of the spine ; PAFS)とし、第1胸椎及び第5腰椎棘突起部の皮膚上に張り付けた反射マーカー間の距離(T1L5-distance)を以って評価した。すなわち、PAFSが増加するとT1L5-distanceが短縮することで脊椎の動態を捉えた。 【方法-その2-】腰椎の体外式の固定具である重量挙げに用いられる腰部ベルト装着,非装着の2条件間におけるT1L5-distanceを上記の方法にて比較検討した. 【結果-その1, 2-】重量物挙上動作超早期に見られるPAFSはVICON systemを用いた本研究装置にて捉えることができた。その角度には個体差がみられたが、概ね挙上重量に比例して増加した。腰部ベルトの装用がPAFSを減少させる傾向が認められた 【今後の展望】本システムのPAFS検出能力は満足のいくものであり、対象を増やしてデータ解析をすすめる方針である。
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