一般に、変形性膝関節症に対する足底挿板には外側ウェッジが用いられ、歩行時の内側thrustを減少させる効果が期待されている。しかし歩行時の足関節や膝関節の内外反は非常に小さく、その測定が難しい。本研究の目的は足底挿板により期待できる効果及び問題点を明確にするため、歩行時のheel-leg line及び膝関節の内外反の角度を歪みゲージを用いた角度計測装置により、その微小な角度を解析し、筋電図解析及び足底圧の測定とあわせて、足底挿板の効果を明確にすることである。角度計には金属板に歪みゲージを取り付け、金属板に垂直方向にかかる力に対してのみ、歪みが生じるように作成した。この角度計により歩行時の踵-下腿において生じる前額面上の角度変化を記録した。また下腿、大腿の筋活動をトリウム社製筋電アンプにより双極導出し、各筋の筋活動を計測した。角度計と筋電図は、ADI社製Power Lab/16spにサンプリング周波数1000Hzで取り込み、AD変換して解析した。足底挿板の素材には、三進興産製ソルボセインを用い、外側ウェッジの角度が4度、8度、12度になるように作成した。歩行はトレッドミル上で行わせ、歩行速度を2km、3km、4kmで設定した。実験の結果は、踵-下腿角度はウェッジ角度の影響を受けず、腓腹筋、腓骨筋、大腿直筋、半膜様筋、大腿二頭筋の筋活動にも明確な影響を与えていなかった。しかし前脛骨筋、中殿筋、大内転筋はウェッジ角度の増加に伴って、筋活動を増加させていた。しかしこれらの影響は歩行速度が速くなると認められなくなった。今後、被験者の数を増やして統計的に一定の結果を出し、膝の内外反角度の歩行中の変化、下肢全体の三次元歩行分析、足底面での重心軌跡などに足底挿板が与える影響を見ることを計画している。
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