テロメアは染色体の末端に位置する(TTAGGG)の繰り返し塩基配列で、ヒトでは正常細胞で約10-15kbの長さで存在する。その役割として、染色体の安定性を保つこと、核膜への染色体のアンカリングなどが言われている。またテロメアは細胞分裂毎に短縮していくため、約80%の癌腫ではテロメア延長酵素であるテロメラーゼが発現していると報告されている。間葉系由来の骨軟部腫瘍では報告が少なく、テロメア及びテロメラーゼの役割ははっきりしていない。今回、106例の骨軟部腫瘍(骨腫瘍50例、軟部腫瘍56例;悪性84例、良性22例)でテロメラーゼ活性の測定を、TRAP assayによりおこなった。 悪性腫瘍では28.6%(84例中24例)で活性が認められた。一方良性腫瘍では局所的には悪性に近い性質を有するGiant Cell Tumorの2例を除くと、5%(20例中1例)でのみ活性を認めた。組織型別では、骨肉腫40%(25例中10例)、軟骨肉腫10%(11例中1例)、ユーイング肉腫50%(4例中2例)、MFH42%(12例中5例)、脂肪肉腫15%(13例中2例)、滑膜肉腫23%(13例中2例)で活性が陽性であった。 今回の検討では、悪性腫瘍で活性の陽性頻度が高い傾向にあったが、良悪性で統計学的有意差は認められなかった。肉腫では、癌腫に比ベテロメラーゼ発現の頻度は低かったが、サンプリングエラーの可能性もあり、現在同部位から採取したDNAを用いて検討中である。一方、テロメラーゼによらないテロメア保持の機構が、骨軟部肉腫の発生に大きく関与している可能性も考えられ、今後の検討が必要である。現在サザンブロッテイングによりテロメア長を測定中であるが、骨軟部腫瘍では23kbにピークのある症例の頻度が比較的高く、テロメアの短縮がみられる癌腫と比し、その発生、増殖機構を探る上で特徴的な結果がみられている。
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