本年度は、肘関節の有限要素モデルの作製と、臨床的には肘関節の形態を3次元CT像などで検討した。肘関節の有限要素モデルはボランティアの肘関節を1mm間隔でCT撮影し、それを現在3次元画像とし有限要素解析用に再構成中である。モデル作製と平行して、臨床的には12歳から24歳までの野球選手48例を対象とし、3次元CTなどを用い、肘関節の形態を観察した。形態には、個人差があり種々の形態をとることが明らかとなった。肘頭の形態は長方形型、台形型、尺側凸型、ドーム型に分類され、頻度はそれぞれ、10.4%、39.6%、35.4%、14.6%であった。肘頭が接する肘頭窩では外側陥凹型と中央陥凹型に分けられ、それぞれ47.9%、52.1%の頻度であることが分かった。投球動作中は肘頭と肘頭窩では圧迫力や剪断力がそれぞれに加わる。形態が異なる場合、運動中でのストレス集中部位は当然異なってくる。この形態学的な個々の差異が、肘頭に生じる種々の骨軟骨障害の原因となる可能性を示唆している。現在有限要素解析用にモデリングしているものは台形型肘頭、中央陥凹型肘頭窩である。まず、この形態における生体力学的特徴を求め、以後各型のコンビネーションより、形態特有の障害を検討する。また、有限要素解析に先んじて、特に解明の主眼としている肘頭疲労骨折に代表される肘頭過労性骨障害の評価を行った。同病態を有する7例の肘頭の変化を単純レントゲン、単純CT、空気造影CT、3次元CT、MPR-CTで評価した。問題となる骨折線の評価には、MPR-CTが最も優れていた。今後、MPR-CTから明らかとなる病態像と有限要素解析から得られる応力分布の比較検討で生体力学的に肘頭過労性骨障害の病態解明が期待される。
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