H7年3月より死体膝と多軸力学試験機を用いて、正常膝前十字靭帯の持つ力学的多様性と現在行われている靭帯再建術の生体力学的評価について研究してきた。 手術直後には力学的に優れているとされた大腿屈筋腱による再建術が、トップクラスの運動選手に使われていないのも、膝蓋腱を使う方法に比べ骨トンネル内での移植腱の固定性に問題のためである。いっぽう、ハイドロキシアパタイト(HAp)は、人工関節の金属面と骨表面とのIncorporationを促進するためにコーティング材として使われていて、良好な結果が報告されている。腱靭帯のような軟部組織にもHApを含む燐酸カルシウム化合物を複合化することが可能となれば、HApをコーティングした移植腱は骨組織と早期・強固な結合が期待できる。われわれは、Taguchiらが1999年に発表した交互浸漬法による高分子材料上へのHAp形成法を生体軟組織に応用し、生体腱とアパタイトの複合化に成功した。 術中コーティング自動化器械の開発 平成13年7月1日より独創的研究成果共同育成事業に採択された「膝関節靭帯再建用・術中燐酸カルシウムコーティングシステム」は、平成13年度末に共同出願した、以下の特許に基づく器械作製の研究である。 生体組織材料を処理する交互浸漬装置および交互浸漬方法 特願2001-017694 出願人:田中順三、菊池正紀、生駒俊之(無機材質研究所)、坂根正孝(茨城県立医療大学)、福崎裕延、山口勇(多木化学)、太田邦博(タマチ工業)、横山能周(エスコム) 現在、プロトタイプは出来上がっており、平成13年7月には、アメリカ、ピッツバーグ大学整形外科、筋骨格研究所(Savio Woo教授)にて、ヒト新鮮凍結腱を使った手術シュミレーションも終了している。
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