ProteoglycanのひとつであるDecorinはTGF-βの作用を不活化させ生体内の肝臓、腎臓、肺などで組織の線維化を抑制する効果があるといわれている。そこでDecorinとTGF-βのMyofibroblastへのin vitroでの影響を調べた。Myofibroblastは3週令のマウスの腓腹筋より単離し、50万cellずつのプレートにTGF-β、Decorin、TGF-β+Decorin、コントロールとして培養開始後24、48、72時間後に細胞数を調査し比較した。その結果、Decorin投与群で明らかに細胞の増殖が抑制され、TGF-β投与により細胞の増殖は促進された。両者を投与した群では細胞数の増加が抑えられていることからDecorinがTGF-βの作用を中和していると推察された。次にDecorinのin vivoでの生物学的、生理学的作用を調べるためにマウスの腓腹筋筋断裂モデルを作成しその組織所見と筋力を測定した。以前の研究により組織修復は筋損傷後2週から始まりその後繊維瘢痕組織の形成が起こることを念頭に入れ、Decorinの投与時期を受傷直後、5日目、10日目、15日目に設定し、それぞれのタイムポイントで異なった濃度O、5、25、50μgのDecorinを投与した。それぞれのマウスは治療後2週間でサクリファイスし腓腹筋を切離し、組織学的検討を行った。 H-E染色では投与量が多いほど、また投与時期が遅いほうがFibrosisは抑制され筋の再生が促進された。またVimentinを利用した免疫組織染色でもH-E染色と同様に投与量が多いほど、また投与時期が遅いほうがFibrosisは抑制されていることが確認された。つまりこれらの結果から受傷後15日目における高濃度Decorinの局所注射は筋の線維化を抑制し筋再生を有利にするということが示唆された。
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