研究概要 |
ラット一過性脳虚血モデルを用いてα2アゴニスト(ミバゼロール、以下Miv)の脳保護効果を神経学的並びに組織学的に検討した。雄Sprague-Dawleyラット(300-400g)10匹をハロタンで麻酔導入した後気管内挿管し、内頚静脈(脱血、薬物投与用)および尾動脈(血圧測定用)にカテーテルを留置した。ラットを各群5匹ずつ対照(C)群(側頭筋温37.5℃+生理食塩水1ml/kg)、Miv-20群(側頭筋温37.5℃+Miv20μg/kg)に分け、それぞれ生理食塩水またはMivを脳虚血30分前に皮下注した。脱血による低血圧(収縮期血圧45-50mmHg)および両側総頚動脈閉塞により前脳虚血状態(平坦脳波)とし、10分後、総頚動脈閉塞解除および返血により再灌流を行った。虚血24、48時間および1週間後に神経学的検査(異常なし=0点、最重症=100点)を行った。虚血1週間後にホルマリンにて脳を灌流固定し、ヘマトキシリン-エオシン染色を行った。神経学的検査では、虚血24、48時間後および1週間後の点数が、C群:29点、20点、19点、Miv-20群:30点、20点、10点(中央値)であり、虚血1週間後でMiv-20群がC群より有意に低かった(Mann-Whitney U-test, P<0.05)。組織学的検査では海馬CA1領域の生存細胞数、虚血細胞数には両群に有意差はなかったが、大脳皮質では、生存細胞数はMiv-20群がC群より有意に多く(110/mm^2vs.39/mm^2,P<0.05)、虚血細胞数はMiv-20群がC群より有意に少なかった(29/mm^2vs.136/mm^2,P<0.05)。結論として、Miv20μg/kgの虚血前皮下投与は、一過性前脳虚血1週間後の神経学的および組織学的予後を改善させた。
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