成人呼吸促迫症候群に代表される致死的な「白血球過剰反応」の発症機構解明のため、活性化白血球による脱顆粒のモデルとして広く用いられているRBL (Rat basophilic leukemia cell;ラット好塩基性白血病細胞)にロイコトリエンB4(LTB4)受容体(BLT1)遺伝子を導入し、安定発現株(RBL-BLT1)を得た。RBL-BLT1でLTB4刺激による細胞内カルシウム上昇と、リソソーム酵素βヘキソサミニダーゼの脱顆粒反応が認められ、用量依存的であった。さらにLTB4刺激がいかなる細胞内シグナル分子を介して脱顆粒反応を起こすか、種々の阻害剤を用いて解析した。LTB4刺激による脱顆粒反応は、百日咳毒素処理、プロテインキナーゼC阻害剤、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3-K)阻害剤ワートマニンにより抑制され、LTB4刺激による脱顆粒反応はGi様タンパク質を介し、プロテインキナーゼC、PI3-Kの活性化を必要とすることが示唆された。カルシウムキレート剤EGTA添加により細胞内カルシウム上昇反応と脱顆粒反応が完全に抑制されたことから、細胞内カルシウム上昇が脱顆粒反応に必要であることがわかった。また、LTB4によるPI3-Kの活性化は細胞内カルシウム上昇反応の影響されず、細胞内カルシウム上昇反応もワートマニンに影響されなかった。さらにホスホイノシトール3キナーゼガンマタイプのノックアウトマウスより採取した顆粒球では、LTB4刺激による細胞内カルシウム上昇反応は野生型マウスと比べ変わりなかったが、脱顆粒反応は顕著に減少していた。以上より、LTB4刺激による脱顆粒反応はGi様タンパク質を介し、細胞内カルシウム上昇とPI3-K活性化の両者が必須であることがわかった。今後、ARDSモデルラットや、BLT1ノックアウトマウスを用いて病態発症におけるLTB4の役割を追求する予定である。
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