先天性無痛無汗症は、生下時よりの無痛、無汗、ならびにその後の精神遅滞で特徴づけられる稀な疾患で、現在本邦で100人弱の患者の存在が知られている。科学技術研究費補助金にもとづく本年度の研究実績は以下のとおりである。 まず本疾患患者のこれまでの麻酔経験を調査するとともに現症を調査し、本疾患患者では無痛を呈するものの触覚過敏を呈する患者が多く、手術にあたっては麻酔が必要であることなどを明らかとし論文として発表した(Tomioka T et al. : Anesthesia for patients with congenital insensitivity to pain and anhidrosis ; A questionaire study in Japan. Anesthesia & Analgesia 94(2002) 271-274)。また本疾患患者で帯状疱疹後神経痛として、かゆみを訴えたと考えられる稀有な一症例を経験し論文として発表した(Tomioka T et al : Post-herpetic neuralgia in a patient with congenital insensitivity to pain and anhidrosis. J. Anesthesia 16(2002)84-86)。次に臨床的検討として、本疾患患者の末梢神経機能について非侵襲的に評価できる検査法である電流知覚閥値検査法を用いて、各神経線維ごとの機能を調べた。その結果、新たな知見を得、現在論文として投稿中である。最後に基礎的検討では、触覚過敏モデル動物の作成に着手し、形態学的ならびに電気生理学的な検討を開始、継続中である。 以上が、本研究費に基づく本年度の研究報告である。
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