先天性無痛無汗症は、生下時よりの無痛、無汗、ならびにその後の精神遅滞で特徴づけられる稀な疾患で、現在本邦で100人弱の患者の存在が知られている。本疾患は本疾患患者のみにとどまらず、健常人の痛みの機序を知る上でも興味深い疾患である。科学技術研究費補助金にもとづく本年度の研究実績は以下のとおりである。臨床的検討として、前年度までの研究により明らかとなった、本疾患患者における触覚過敏について調査を行った。手法として末梢神経機能について非侵襲的に評価できる検査法である電流知覚閾値検査法を用いたが、まずその信頼性を確認するため健常人について同検査を行い、その信頼性を論文として発表した(Tomioka T et al : Are there circadian changes in measuring the Current Perception Threshold test? The Pain Clinic. 14 : 213-216. 2002)。続いて本疾患患者についても同検査を行い、興味ある知見を得、現在、論文として投稿中である。次に基礎的検討では、触覚過敏モデル動物の作成を行い、形態学的ならびに電気生理学的な検討を継続中である。またその予備実験で得られた結果もあわせて論文として発表した(Sawamura S et al : The importance of tail temperature monitoring during tail flick test in evaluating the antinociceptive action of volatile anesthesia. Acta Anaesthesiologica Scandinavica. 46 : 451-454. 2002)。以上が本研究費にもとづく本年度の研究報告である。
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