本年度は、家兎の大脳皮質に酸素分圧、二酸化炭素分圧、pHおよび温度を測定できるセンサー(パラトレンド)を挿入し、頚部駆血による一過性脳虚血の脳組織酸素分圧(PtO2)、二酸化炭素分圧(PtCO2)、pHに及ぼす影響について調べた。 家兎(n=5)を気管挿管後、イソフルランを1〜1.5%吸入させた。頭蓋骨を穿頭し大脳皮質にパラトレンドセンサーを挿入した。酸素濃度21%におけるPtO2は、27±3mmHg、PtCO2は52±2mmHg、pHは7.22±0.03でありこれまでの報告とほぼ同様であった。脳温は、37.6±0.4℃であった。頸部に巻いた駆血帯を700mHgで3分間駆血し短時間の一過性脳虚血侵襲を与えた。3分後のPtO2は9±7mmHgと、虚血レベルとされる10mmHg以下に低下した。PtCO2は64±4mmHgと上昇し、pHは7.15±0.04と低下した。駆血解除後は、PtO2とPtCO2は速やかに虚血前値に回復したが、pHは再灌流10分後でも7.19±0.05と軽度低下していた。 これらの結果より、短時間の一過性脳虚血時に脳組織のPO2の低下と組織のアシドーシスをパラトレンドセンサーが測定可能であることが明らかとなった。来年度は、虚血前に高血糖とした群と正常血糖群に分け、より長い6分間の脳虚血時および虚血再灌流後の脳組織のPO2、PCO2とpHの変化を調べることにより、虚血中のアシドーシスの脳障害増悪のメカニズムを組織での酸素環境の面から検討する。
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