ケタミンによる全身麻酔下でラットの後頭骨第一頚椎間より持続脊椎麻酔用カテーテル(30ゲージ)をくも膜下腔から腰椎レベルまで挿入して、脊椎麻酔モデルラットを作成した。5日間観察して神経障害を来していないことを確認した後に、自動注入ポンプを用いてリドカイン、ジブカイン、クロルプロマジン、硫酸マグネシウムの水溶液をそれぞれ1μl/minの注入速度で総量80μlをラットのくも膜下腔に投与した。局所麻酔作用発現は運動麻痺や痛み刺激による逃避反応の有無に加え、ニューロメーターCPT(neurotron社)を用いてAβ、Aδ、Cの各知覚線維ごとの遮断効果をそれぞれ局所麻酔薬投与前後で調べた。局所麻酔薬として臨床使用されているりドカイン、ジブカインの場合、濃度依存性に神経遮断効果は増強した。低濃度域でC、Aδ線維が遮断されより高い濃度になってAβ線維が遮断された。クロルプロマジン、硫酸マグネシウムの場合も臨床使用の局所麻酔薬と同様に神経学的所見および行動学的所見から濃度依存性に局所麻酔作用が認められ、知覚線維の遮断効果もほぼ同じような結果が得られた。抗精神病薬クロルプロマジンや単一元素のマグネシウムによっても局所麻酔作用が認められたことは、生体の活動電位を抑制する様々な機序によって神経遮断が生じるのではないかと推測される。局所麻酔作用はナトリウムチャネル機能の可逆的な阻害によって発現すると考えられており、そのチャネル阻害の様式を問わず、薬剤がチャネル蛋白やリン脂質のどこに結合しようと直接的または間接的にナトリウムチャネル阻害が起これば、局所麻酔作用が生じるのではないかと推測される。
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