研究概要 |
短時間虚血や熱処理および薬理学的処置を行うことにより,その後の虚血に対する保護効果を生じること(プレコンディショニング効果)が心臓・脳などで多数報告されてきているが,肝臓のプレコンディショニング効果におけるメカニズムおよび薬理学的プレコンディショニング効果についての研究は少ない。 昨年度までに,ヒト肝細胞株を用い、1)一酸化窒素(NO)ドナーを前処置することで,酸化ストレスに対する細胞障害が抑制されること,2)NOドナー前処置による保護効果は20時間で最大となること,3)HSP70の蛋白発現がNOドナー前処置により増加していること,4)細胞内抗酸化酵素群の活性は変化がないこと,5)肝での保護効果におけるミトコンドリアカリウムチャンネルの関与は否定的であることを明らかにした。 今年度は、新たに、雄性ウィスターラットを用いた生体モデルで、1)NOドナー全身投与で、24〜48時間後にHSP70蛋白が肝に誘導されていること、2)NOドナー投与群が非投与群と比較して、肝虚血再灌流障害(AST、ALT、LDHの上昇)が抑制されることを明らかにした。 現在、今までの研究成果をまとめて、投稿中であり、またHSP70を強制発現したヒト肝細胞株を確立しており、虚血肝細胞保護作用の分子機構解明のための実験を引き続き行っている。
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