研究概要 |
目的:クモ膜下腔あるいは硬膜外腔に留置できる局所麻酔薬電極を作成し、同部位での濃度変化や拡散を連続的・経時的に測定する方法を確立することが、本研究の最終的な目的である。平成13年度には、まず体外で、安定した反応を示す電極を開発することとした。 方法と経過:電極の構造は被覆線型とし、芯線の材料には直径0.3mmの銅線を用いた。局所麻酔薬選択性膜は、PVC+局所麻酔薬+NaTPB+NPOEを基本構成とした。これは、研究者らが以前に用いた液膜型電極の局所麻酔薬センサと同じ構成だが、液膜型電極では、膜に流動性を残す目的でPVC含有率を2%とした。今回、芯線を被覆して安定させるために、局所麻酔薬選択性膜のPVC含有率を40%に増加させた。局所麻酔薬にはプロカイン塩酸塩を用いた。PVC含有率を上昇させた結果、膜構成材料を均一に混和することが困難になった。有機溶媒であるTHFの混和量を増やすことで対処した。液状の膜材料を銅線表面に付着させたのち、THFを蒸発させ、安定な局所麻酔薬選択性膜を形成させた。細胞外液に類似した電解質組成の溶液(NaCl 140mM, KCl5mM)で、段階的に濃度を調製したプロカイン溶液を用いて電極の構成を行った結果、0.1mM以上で42〜53mV/log[procaine]の直線性を示し、液膜型電極とほぼ同じ特性が得られた。 課題と今後の計画:生体のイオン濃度を測定する際には、体液中のタンパク質が電極の特性を悪化させることが知られており、PVC以外の膜材料を含めて検討したい。局所麻酔薬の光学異性体は、異性体間で麻酔効果と毒性が大きく異なる。近年、単一の郊外異性体のみの局所麻酔薬製剤が利用できるようになった。光学異性体を識別できる電極の開発も併せて進めたい。
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