本年度、我々はβアドレノセプターアゴニストが、腹膜炎敗血症時の横隔膜機能低下に及ぼすメカニズムについて検討した。β1アドレノセプターアゴニストであるドブタミン(dobutamine)は、腹膜炎敗血症時の横隔膜機能低下に影響を与えなかった。一方、β2アドレノセプターアゴニストであるプロカテロール(procaterol)やテルブタリン(terbutaline)は腹膜炎敗血症時の横隔膜収縮力を増強し、疲労からの回復を促進した。この横隔膜収縮力増強ならびに疲労からの回復作用は、βアンタゴニストであるプロプラノロール(propranolol)の前投与により消失した。細胞内のcAMPを測定した結果、ドブタミンは細胞内のcAMP濃度に影響を与えなかったが、プロカテロールやテルブタリンは細胞内のcAMP濃度を上昇させた。プロカテロールやテルブタリンによる細胞内cAMP濃度の上昇は、プロプラノロールの前投与により抑制された。またdibutyryl cAMP投与は、腹膜炎敗血症時の横隔膜収縮力を増強し、疲労からの回復を促進した。以上の結果より、β2アドレノセプター刺激によるadenylate cyclase systemの活性化による細胞内cAMP濃度の上昇が、腹膜炎敗血症時の横隔膜機能低下を改善させることを明らかにした。
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