痛みの経路は、知覚としてのanterolateral pathwayと痛みに伴う情動部分に関与するmedial pain pathwayが存在すると考えられている。Medial pain pathwayの中枢である帯状回は、末梢の痛みに反応する神経細胞が存在し、痛みの逃避行動と関連があることが報告されている。申請研究は、ラットの尾部に機械的圧刺激を与え、これに反応する神経細胞の発火を記録、解析することを目的とした。ラット尾部への圧刺激は、興奮と抑制の両方の反応が観察された。興奮が誘発される神経細胞は、さらに2つのタイプに分類された。一つはspecific nociceptive neuron (SN)であり、もう一つはwide range neuron (WD)である。いずれも、刺激により誘発される神経発火が観察されるが、刺激が終った後も発火が持続するpost stimulus dischargeを伴うtonic typeの反応が主体であった。SNのpost stimulus dischargesはmorphineにより抑制されるが、其の抑制には、用量依存性の傾向が認められた(統計処理を目的として、例数を増やすための実験が進行中である)。一方、WDでは、刺激の強さに比例してpost stimulus dischargesの持続時間が長くなり、刺激の強さをcodingしていることが、判明した。このcodingの様式は、medial pain pathwayが痛みの記憶に関与したり、逃避行動を起こす時に必要な痛み情報を、anterolateral pathwayで観察される侵害受容細胞の反応とは異なる形で伝達している可能性を示唆した。現在結果をNeuroscienceに投稿中である。
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