特発性無精子症患者30名と健常男子51名の末梢血リンパ球よりDNAを抽出し、アンドロゲン受容体およびエストロゲン受容体アルファ遺伝子の多型と変異を解析した。アンドロゲン受容体遺伝子のエクソン1のCAG反復長は特発性無精子症患者で23.4±2.9(平均±標準誤差)、健常男子で23.7±3.2と有意差を認めなかったが、前者ではCAG反復長が29以上の症例が2例(6.6%)存在したのに対し、後者では1例も認めなかった。エクソン1-8の変異解析では、両群ともに異常を認めなかった。また、エストロゲン受容体アルファ遺伝子のエクソン4(コドン325)は、特発性無精子症患者でCCC-CCC(C/C)が3例(10%)、CCG-CCC(G/C)が17例(55%)、CCG-CCG(G/G)が11例(35%)であった。健常男子では、C/Cが14例(30%)、C/Gが22例(48%)、G/Gが10例(22%)であり、両群間において有意差(p<0.05)を認めた。特発性無精子症においてアンドロゲン受容体遺伝子エクソン1におけるCAG反復長の延長およびエストロゲン受容体アルファ遺伝子エクソン4における多型が造精機能障害の一因である可能性が示唆された。
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