(目的)尿路結石の80%以上を占めるシュウ酸カルシウム結石の最も重要な危険因子は尿中シュウ酸排泄量の増加でありシュウ酸カルシウム結石患者の多くに尿中シュウ酸排泄量の増加が認められる。尿中に排泄されるシュウ酸の多くが以前は肝臓で代謝される内因性のものが多くを占めると言われていたが最近では尿中に排泄されるシュウ酸の多くが食事に起因すると言われている。人間の腸内にはシュウ酸を分解するシュウ酸分解菌が存在することがAllisonや当教室の伊藤らによって報告されている。本研究では結石形成に及ぼすシュウ酸排泄量とシュウ酸分解菌の関係を検討した。 (対象と方法)22人のシュウ酸カルシウム結石患者と34人の健常者の便をシュウ酸添加のPYG培地で1週間嫌気培養しシュウ酸分解菌の存在を確認した。また24時間蓄尿を行い1日シュウ酸排泄量も測定した。 (結果)健常者34例中28人(82%)でシュウ酸分解菌が存在した。結石患者では22例中10例(45%)にシュウ酸分解菌が存在した。このことより結石患者では有意(p<0.01)にシュウ酸分解菌が健常者に比べて存在する割合が低かった。1日尿中シュウ酸排泄量を検討した場合、1日尿中シュウ酸排泄量が40mg/day以上の高シュウ酸尿の症例はシュウ酸分解菌が存在した27例中4例(15%)のみであったが、シュウ酸分解菌が存在しなかった症例16例中8例(50%)が高シュウ酸尿であった。 (結論)人間の便中に存在するシュウ酸分解菌は今回の研究から結石患者には少ない傾向が認められた。またシュウ酸排泄量の多い症例ではシュウ酸分解菌の存在する割合が少なかった。以上のことからシュウ酸分解菌は食物によって摂取されるシュウ酸を腸管内で分解することにより体内への吸収を阻害しひいては尿中シュウ酸排泄量を減少させることが推察された。シュウ酸分解菌の欠除は尿路結石の危険因子であると考察される。
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