本研究では、PSMの発現が前立腺癌の悪性度、すなわち転移、遊走能と非常に密接に関与するという仮説を証明するために実験を行っている。 平成13年度は、申請者がすでに蛋白発現ベクターpCR3にサブクローニングしてあるPSMを、PSMの発現が薬剤の投与によってコントロールできる新しいベクター(TRex system ; Invitorogen)を用いたシステムに利用するところからやり直すことにした。これはPSMの発現がない前立腺癌細胞株では不必要な操作だが、PSMをわずかながら産生する正常前立腺細胞株を利用するときには有用と考えたためである。このシステムはPSMをサブクローニングした蛋白発現ベクターと同時に遺伝子導入した発現コントロール用のベクターを、2つの薬剤を用いてその発現を調節するものである。今年度は、正常前立腺細胞株PZ-HPV7にリポフェクション法を用いてそれぞれのベクターを遺伝子導入することに成功し、安定した細胞株として作成した株数個において、PSMの発現の度合や、薬剤による発現のコントロール状態を現在検証中である。今後は、それぞれの細胞株において、金コロイド法を用い細胞の遊走能の違いを、遺伝子導入前の細胞と後の細胞で比較する。マトリゲルアッセイではこれら細胞の転移能及び遊走能の比較を行う予定である。
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