(1)尿路上皮癌患者75例から、癌組織部分を採取するとともに、正常尿路上皮粘膜組織を同時に採取。それぞれから、mRNAを抽出し、逆転写酵素により、cDNAを合成し、hTRT遺伝子の塩基配列の一部に相補的なオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにて増幅させ、hTRTmRNAの発現の有無を検討した。75例中60例において癌組織からhTRTmRNAの発現をみた。また、これらの同一固体から得られた正常尿路上皮粘膜組織からはhTRTmRNAは発現しなかった。すなわち、高率に尿路上皮粘膜からhTRTmRNAが特異的に発現したことから、この癌への特異性が確認された。 (2)さらに、75例の患者からの尿を採取し、それらから尿中遊離細胞を抽出。癌組織と同様にPCR法を用いてhTRTmRNAの発現をみると、51例において検出された。すなわち、尿中遊離細胞からも高率にhTRTmRNAの腫瘍マーカーとしての有用性の可能性が期待された。 (3)現在、31名の尿路上皮癌患者で保存的治療(内視鏡的治療、膀胱・腎温存治療)を受けた患者に対し、スクリーニングで尿中遊離細胞を採取し、hTRTmRNAの発現を検討し、経過を観察している。症例をさらに追加しつつ、早期再発の指標となるか否かを検討する。 (4)現在、院内検査で尿細胞診に提出する患者の尿のhTRTmRNAの発現を見ている。現時点では細胞診陰性例でhTRTmRNA陽性患者が102人中20人にみられ、癌を精密検査(膀胱鏡、MRIなど)で確認できた患者は8人であった。残り12人については今後の癌発生について十分経過を追随する予定である。
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