肝臓のserine : pyruvate/alanine : glyoxylate aminotransferase (SPT/AGT)はヒトや草食動物ではペルオキシゾーム(Ps)に、肉食動物では大部分がミトコンドリア(Mt)に存在する。ラットではこの両オルガネラに存在し、グルカゴンの投与でMtの酵素のみが顕著な誘導を受ける。SPT/AGTはセリン代謝とグリオキシル酸代謝に関与するbifunctional enzymeであり、セリン代謝にはどちらのオルガネラに存在しようと実質的に関与することが本学生化学第一における研究により明らかにされている。従って、本酵素の種特異的、食習性依存性細胞内局在はグリオキシル酸をその生産の場であるオルガネラにおいて適切に代謝するためと考えられる。 尿路結石形成の最大の危険要因の一つである蓚酸の直接の前駆体としても知られるグリオキシル酸は、ヒトや草食動物では主として肝臓の(Ps)でグリコール酸から生産される。グリコール酸は光呼吸の中間体であり、動物組織より植物に多く含まれている。一方、グリオキシル酸はL-ヒドロキシプロリン(L-Hyp)からも産生されること、およびその産生細胞内部位は(Mt)であることが知られている。 本研究では、ラットにL-Hypやグリコール酸を投与すると尿中への蓚酸排泄が著明に増加すること、グルカゴンによるMtのSPT/AGTの誘導はL-Hypからの蓚酸生成を有意に減少させるが、グリコール酸からの蓚酸生成には影響を与えないことを示した。 L-Hypは動物の総蛋白質の30%を占めるコラーゲンに10-13%(w/w)も含まれていることから、肉食動物において、SPT/AGTのMt局在はL-Hyp由来のグリオキシル酸を効率良くグリシンに代謝し、有害な蓚酸の過剰生産を防ぐために有効であると推察された。
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