申請者は、DNA修復欠損マウスにおける精子形成不全の遺伝的不安定性を解析するために以下の実験を行い、結論を得た。これまでの予備実験で、XPAマウスに高線量のX線照射を行うと重篤な発育不全と造血異常が生じるために精巣での遺伝的不安定性を検索する系として適当ではなかった。そこで低線量のX綿を照射したところ、著しい発育不全と造血異常はなく、XPAマウスは対照群に比べ顕著な精巣萎縮が見られた現在、X線の照射条件(X線の線量、照射回数等)及び経時的な精巣の変化を詳細に検討している。 また、XPAマウス精巣内の遺伝的不安定性がDNA損傷の蓄積によって生じるか否かを検討するために以下の実験を行った。XPA蛋白質によって除去修復されるDNA損傷を生成する薬剤をXPAマウスに投与することで、XPAマウス精巣に遺伝的不安定性を与え精子形成不全状態になるかどうかを調べた。予備的な実験で、薬剤投与後6週の対照及びXPAマウスに精巣重量・組織像の変化は見られなかったが、投与後10週のXPAマウスにのみ精巣重量の減少と精子形成不全の組織像が観察された。同週の対照マウスに異常は見られなかった。現在、DNA損傷薬剤の投与条件(投与量、投与回数、投与方法等)及び経時的な精巣変化を検索している。今後、上記の実験条件を用いて精子形成に対する遺伝的不安定性の影響を評価する予定である。本年度はXPAマウスにおけるDNA損傷の蓄積と精巣の遺伝的不安定性との関係を調べる実験条件が明らかになり、これを用いて次年度は精子形成に対する遺伝的不安定性の分子病態を明らかにしていく。
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