申請者は、DNA修復欠損マウスにおける精子形成不全の遺伝的不安定性を解析するために以下の実験を行い、結論を得た。これまでの予備実験で、XPAマウスに高線量のX線照射を行うと重篤な発育不全と造血異常が生じるために精巣での遺伝的不安定性を検索する系として適当ではなかった。そこで低線量のX線を5日間照射したところ、著しい発育不全と造血異常はなく、XPAマウスは対照群に比べ顕著な精巣萎縮が見られ、現在その遺伝的不安定性について解析を進めている。 また、XPAマウス精巣内の遺伝的不安定性がDNA損傷の蓄積によって生じるか否かを検討するために以下の実験を行った。XPAマウス精巣の病態の一因を探る目的で、予備実験としてDNA損傷を認識する抗体を用いて免疫染色を行ったところ、病変の生じる前から精巣内細胞でDNA損傷の蓄積が生じている可能性が示された。このことから、精子形成不全の一因はDNA損傷の蓄積にあるのではないかと考えられる。この結果をふまえ、各遺伝子型マウス精巣における遺伝子発現の比較を行い、特にXPAマウス精巣における遺伝子発現の変化に注目して解析を進めている。今後、上記の結果をふまえて精子形成に対する遺伝的不安定性の分子病態の過程が明らかになるものと考えられる。
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