(1)オステオポンチンの転写因子レベルでの発現制御の解明 私達は分子生物学的手法を用い、尿路結石の有機物質(マトリクス)成分としてオステオポンチン(OPN)を同定し、他臓器の石灰化にも重要な役割を担っていることを報告してきた。しかしOPNの発現を制御する転写因子については解明されていない。骨組織においてOPNと転写因子RUNX2(CBFA1/PEBP2αA) の mRNA発現部位が同一部位であること、RUNX2のノックアウトマウスでOPN mRNA発現が顕著に低下していることからOPN遺伝子の発現はRUNX2に制御されていることが推察される。RUNX2がOPN遺伝子のプロモーターとして作用しているかをルシフェラーゼアッセイにて検討した。RUNX2の近傍に結合部位をもつETS1との共作用についても検討した。RUNX2、ETS1とOPN遺伝子のプロモーター部位との結合をゲルシフトアッセイにて検討した。さらにシュウ酸前駆物質であるエチレングリコールを負荷した結石モデルラット腎で、OPNとRUNX2について経日的にsacrificeし、in situ hybridizationで遺伝子発現を検討した。RUNX2とETS1はOPNのプロモーターとして作用し、結石モデルラット腎で結石形成の前にOPNとともにRUNX2の発現増加がみられた。結石形成時のOPN発現亢進はRUNX2を介している可能性が考えられた。 (2)オステオポンチンの発現レベルでの制御 in vitroにおいてイヌ由来腎尿細管細胞を長期培養するとリン酸カルシウムの沈着をみることが知られている。結石マトリクスであるOPN発現ベクターをMDCK細胞に遺伝子導入し安定発現型OPN過剰発現MDCK cellの株を確立した。今後、結石形成までの様子および結石形成の程度を観察する。
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