前立腺癌患者の血中PSAの同定より、癌の細胞悪性度ならびに転移発現との関連を検討した。 39例の未治療前立腺癌症例の末梢血5mlより血中の有核細胞をFicoll遠心分離法にて抽出し、この有核細胞よりtotal RNAを抽出した。各種PSAのPCR primerにつきPSA産生前立腺癌細胞LNCaPを使用した予備実験により最も検出感度の高いPSA primerを選定した。予備実験にて設定した至適RT-PCRの反応条件により、上記症例の検体に対しPCR反応を行い、PSAの特異的反応が得られるか否かを検討した。39例中15例(38.5%)に陽性所見が得られた。これを臨床的に局所限局癌と診断された22例中8例(36.4%)で、また、所属リンパ節転移あるいは骨転移を有する8例中5例(62.5%)にRT-PCRで陽性所見が得られた。さらには局所限局前立腺癌として前立腺全摘術が施行され切除断端に癌細胞が存在した2例においてもRT-PCRの陽性所見を示した。 以上の結果は前立腺癌患者末梢血中単核細胞におけるPSAの発現の有無が、癌の局所限局の有無を予測する良好な指標となり得る可能性を示すことが示唆された。 これら検討の後、RT-PCRのPCR産物を抽出、Southemハイブリダイゼイションにより検討すると、陽性バンドが確認され、このPCR産物がPSAであることが立証された。現在この産物に対して、DNAシークエンサーによる塩基配列の確認の条件を設定中である。
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