妊娠羊5頭を対象として胎仔慢性実験モデルの作成を試みた。妊娠120日前後の羊を用い、ハロセンによる全身麻酔下で、腹壁正中より開腹し、子宮壁に一部切開を加え、胎仔の頭部・頸部を子宮外に露出させた。胎仔には頸動脈カテーテル、頸動脈・臍帯動脈血流計、臍帯動脈パルスドッツプラ血流計プローブ、脳波電極、心電電極、筋電電極を、母獣には頸動静脈カテーテルを装着した。胎仔を子宮内に戻し子宮筋層を縫合し、母体の腹壁を縫合した。胎児に装着した各種カテーテル・電極類は母獣側腹部腹壁を通し側腹部腹壁に固定したバッグ内に収納した。抗生剤を投与し術後の回復を待った。また、手術開始前、全身麻酔下で母獣腹壁上から、超音波断層法により子宮胎盤胎児を観察した。 術前の超音波断層法を用いた観察では、腹壁の体毛や腹腔内の豊富な消化管内ガス像は観察の障害なったが、剃毛と超音波ゼリーの使用、プローブ位置の工夫により、羊水腔、胎児、胎盤の観察が可能であった。本年度の研究では、母獣・胎仔の状態が不良のため、手術侵襲から回復後の本格的な実験にはいたらなかった。その原因としては、母獣の死亡が2例、胎児死亡が1例、早産が1例、カテーテルトラブルが1例であった。母獣死亡の原因としては、術前からの状態が不良であったものが1例、手術中の呼吸管理が不十分であったものが1例であった。胎児死亡、早産は装着するカテーテル、電極類が多いため、胎児への侵襲が大きいことによると思われた。 次年度はカテーテル電極を必要最小限にして、実験を行う予定である。
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