研究概要 |
卵巣機能の解明が進むにつれ、卵巣内局所因子の存在やその作用発現が明らかにされつつある。我々は、複雑な脈管構造を有する卵巣では血管作動性物質の役割が重要であろう点に注目し、一酸化窒素(Nitric Oxide, NO)の卵巣機能調節に及ぼす影響について研究している。本研究は、卵胞発育・卵胞閉鎖に中心的な役割を果たす顆粒膜細胞に及ぼすNOの影響について、生化学的・分子生物学的に検討することを目的としている。 1.本年度は、近年卵胞退縮の機構として注目を集めるアポトーシスとNOとの関係を培養ブタ顆粒膜細胞を用い検討した。(1)まず、前回の研究より3年経過しているため、ブタ卵巣顆粒細胞の培養条件を設定する実験を行った。(2)その後、ブタ培養顆粒細胞を用いてアポトーシスをTUNEL法にて検出した。NO供与剤、NO合成酵素阻害剤の添加の有無により、TUNEL陽性細胞の割合を検討している。実験ごとのばらつきが大きく、薬剤の添加による有意差は得られていない。(3)条件設定の検討を行うとともに、DNAラダー検出法、FACSを用いた検出法もあわせて検討している。 2.当科で施行される体外受精・胚移植法の採卵時に得られるヒト黄体化顆粒膜細胞を培養し、NO供与剤、NO合成酵素阻害剤の添加の有無により、VEGF産生の差を検討している。最近症例がlow responderに偏っており、low responder由来の顆粒膜細胞は細胞数が集まらず、データが得られない点で滞っている。 3.次年度は、アポトーシスに対するNOの影響をみる研究をまとめ、本年度施行できなかった培養ブタ顆粒膜細胞のNOS mRNAの発現をみる研究に着手する予定である。また、high responder由来のヒト顆粒膜細胞が得られる際には、VEGFとNOとの関係をみる研究を進める予定である。
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