研究概要 |
1 正常子宮内膜はエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)を通して性ステロイドによる増殖調節を受けているが、この機能発現には受容体転写供役因子の関与が指摘されている。今回の研究では性ステロイド受容体転写供役因子のうち、co-activatorとしてCREB binding protein(CBP)およびsteroid receptor coactivator-1(SRC-1)、co-repressorとしてはsilencing mediator for retinoid and thyroid-hormone receptor(SMRT)、nuclear receptor corepressor(N-CoR)の発現を免疫染色によって観察し、同時に、ER/PR、増殖マーカーであるKi-67との発現を比較検討した。この結果co-activatorであるCBP,SRC-1は性周期を通じて瀰漫性の発現が観察され、特にSRC-1は増殖期により強く染色される傾向を示し、ER/PR、Ki-67との相関が観察された。また免疫沈降法によってCBP、SRC-1はERとの複合体を形成していたことから、これらの分子がエストロゲンによる細胞増殖に関与している可能性が示唆された。一方、SMRT、N-CoRの発現は局所的でありその機能的な意義は不明であった。 2 次に子宮内膜癌(55例)におけるこれら性ステロイド受容体転写供役因子の発現を免疫染色によって観察し、その意義を検討した。内膜癌では各因子の陽性例がCBP;49例(89%)、SRC-1;48例(87%)、N-CoR;13例(24%)、SMRT15例(27%)であり、SRC-1陽性例は有意に高分化型癌に多く、SMRT陽性は有意に低分化型癌に多かった。しかしながらこれらの共役因子の発現とER/PR、Ki-67の発現には明らかな相関は見られず、また、予後因子としての意義もみられなかったことから、内膜癌においては共役因子がステロイドの効果発現に強く関与している可能性は低いと思われ、これがER/PR陽性の子宮内膜癌の増殖がしばしば性ステロイドに反応しない原因の一つである可能性が示唆された。
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