セリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)ファミリーに属する扁平上皮癌関連蛋白SCC抗原が蛋白分解酵素と反応する際、分子表面に存在するreactive enter loop (RCL)が分子内の間隙に入り込むことが予想される。本研究ではSCC抗原-1蛋白、SCC抗原-2蛋白と特異的に結合するペプチドを開発するために、各々のRCLに相当するアミノ酸配列に着眼し、今回、N末端をアセチル化した13残基程度からなるペプチド(RCL-SCCA1、RCL-SCCA2)を作成した。まず、SCC抗原と同じくセルピンファミリーに属するantithrombinに対し、今回作成したRCL-SCCA1、RCL-SCCA2の2種類のペプチドを添加すると、電気泳動上各々antithrombin・ペプチド複合体が確認され、合成したペプチドがantithrombinの分子内の間隙に結合したと考えられた。次に、扁平上皮癌組織中SCC抗原-1蛋白、SCC抗原-2蛋白に対するRCL-SCCA1ペプチドおよびRCL-SCCA2ペプチド添加の影響を今回確立した未変性条件下2次元電気泳動法で解析すると、SCC抗原-1蛋白のスポットは特に変化を認めなかったが、SCC抗原-2蛋白はRCL-SCCA2ペプチド添加によりその多量体が減少し、SCC抗原-2蛋白・RCL-SCCA2ペプチド複合体のスポットが新たに形成されることが判明した。すなわち、今回作成したRCL-SCCA2ペプチドはSCC抗原-2蛋白に特異的に結合すると考えられたが、今後はSCC抗原-2蛋白により効率的に結合するRCLペプチドをペプチドのアミノ酸残基数を変化させることでさらに検討を追加していく必要性があると考えられた。さらに、SCC抗原-1蛋白、SCC抗原-2蛋白は非常に高い相同性を有するのにもかかわらず、熱安定性に差を有することを新たに見い出した。
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