骨粗鬆症は高齢化社会が進む現代にて、寝たきりや他の合併症を誘発する極めて問題となる疾患である。なかでもその治療薬として使用されているビタミンDは腸管からのカルシウム吸収促進および骨での石灰化を促進させる栄養素である。本研究では、ビタミンD受容体(VDR)遺伝子の腸管特異的発現に対するエストロゲンの作用について検討を行ってきた。前年度、腸管での大腸癌由来上皮細胞株(Caco-2)内にエストロゲン添加によるVDR mRNAの発現が増加したことを報告したが、VDR遺伝子5'-転写調節領域におけるエストロゲンの応答領域は同定できなかった。本年度はVDR発現を増加させるエストロゲンの間接的な機構の存在が考えられたため、ホメオボックス遺伝子であるCdx-2の5'-転写調節領域のクローニングを行い、これを含むリポーターベクターを作成し、さらにCaco-2細胞に導入後、エストロゲンの添加による転写活性をルシフェラーゼアッセイにより解析した。その結果、エストロゲン添加によるCdx-2の発現が有意に上昇する事が見出された。そこで、現在種々の異なったサイズのCdx-2遺伝子5'-転写調節領域を含むリポーターベクターを作成し、この領域におけるエストロゲン応答配列の同定を行っている。以上のことより、腸管でのVDRの発現はCdx-2のみならず、エストロゲンによるCdx-2を介した二重支配の調節を受けることが示唆され、さらに閉経後骨粗鬆症患者では、エストロゲンの欠乏により、腸管でのVDRを介したカルシウム吸収の低下を引き起こしていることが考えられた。今後はこのような閉経後の患者におけるカルシウム吸収を上げるような食品ならびにエストロゲンに変わる吸収促進機構を解明する必要があると思われる。
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